温柔敦厚なモビリティの川和聡先生ってどんな人?

川和 聡 先生

ON

「NID人のONとOFF」今回は学生からの信頼も厚い川和聡先生に直撃!

仕事熱心な川和先生のONの姿、深掘りしていきます!

「よろしくお願いします!」

名前:川和聡

学科:デザイン学科

専門分野:プロダクトデザイン

自己紹介

川和先生の専門は、プロダクトデザインの中でも、特に自動車やバイクを中心としたモビリティーデザイン(輸送機器デザイン)。大学へ赴任される前は大手自動車メーカーにてオートバイのデザイン開発部門で長く活躍されました。

大学は何年目ですか?

もう今年で4年目に入ったところ。ようやく慣れてきたところですね。

様々な画集や技術本の並ぶ本棚。ミニカーも!

大学はどうですか?

いや、大学の教員の仕事がこんなだって全然知らなかったので驚きですよ。大学の先生って週に2日か3日くらいの授業を受け持って、あとは研究をするみたいなイメージだったんですけれど、僕初年度後期に一番多い時で週19コマありましたからね(笑)。

ひえ~! すごいですね……。

ずっとじゃないけどね。こんなの研究なんかできないじゃんって思いましたけど……。まあでも3年経ってやっと一通り慣れたかな。
最初はいきなり授業やってくださいって言われてどうすりゃいいんだろって思いましたけどね。

というと?

いやね、プロダクト系の演習とか実習とかは他の先生と一緒にやるからいいんですけれど、初年度から一人で任される授業が意外と多くて。

いきなり一人で。

そう、いきなり一人で(笑)。
初年度と2年目はすっごい戸惑いましたね。
誰にも聞けないじゃないですか、授業ってどうやってやるのって。
もう開き直って、適当…っていたら失礼だけれど。自分のやり方で始めました。
ただみんなが「受けて良かった」って思えるような知識とか技術とかを渡せるかな、この授業楽しいかなっていうのは考えちゃいますよね。

ではそんな先生の、個人的なこだわりというものありますか?

そうですね、こだわり……。
やっぱり「楽しくないとダメかな」というのはありますね。
仕事ってとっても辛いことが8割なんだけれど、最後に残る「やっぱりこれ楽しいな」っていうのがすごく大事だなと思っているので。
みんなも授業や課題はそういう意味じゃ大変でしょ。辛いでしょ(笑)。
辛いことばっかりだけどでもなんかこう最後に残る「これやってよかった」って充実感が、楽しさだと思うんですよね。

そういうのある?

あー、ありますね。

そうでしょう(笑)。
自分で何かを習得したとか、何かが出来上がったっていう楽しさね。 
そういうのがすごく大事だなって思ってるのが今はこだわりといえばこだわりかな。

そのこだわりは、ホンダで働いていたときからですか?

それも確かにね。後半は特にすごく責任の重い仕事であったことでよりそう思うのかもしれません。
カッコつけて言うわけじゃないですけれど、プロダクトデザインってやっぱり使う人の顔が見えるっていうのが醍醐味なんですよね。
バイクは特に、東南アジアとかインドとかすごい大きな市場なんですよ、乗ってる人の数も桁違い。
市場調査とかで行って、自分がデザインしたバイクが本当何十台も走っていて、乗ってる人が楽しそうに使っているのを見る。それが、仕事してきた中での一番の喜びでしたね。

めっちゃいいですね。

(笑)。もっともらしくバイクデザインの話をしてますけど、元々は車のデザインをやりたかったんですよ。

え、そうなんですか?

そう。カーデザイナーになるつもりでホンダに入社したんだけれど、配属先はバイクだった(笑)。
もうバイクのことなんて全然わかんないんですよ。嫌だったよー。

嫌だったんですか?

だって、周りの人はほぼ全員バイク好きでバイクのことなんでも知っていて、もう16歳からバイク乗ってるとかいう人ばっかり。
免許持ってないですとか言うとね、もう相手にもされないっていう。デザイナーとして何もできないからね。
だからもう、最初に教習所通って、バイクってどんな種類があるんだろうとかそっからですよ。
ホンダとヤマハとスズキ、カワサキの区別もつけられなくて、基礎的なところから勉強しながらやってみたら、これが意外と楽しかったんですよね。
入社直後は嫌で「転属願」を出したりしてたんですけれど、結果的には33年もそこに居ちゃったんだから、面白かったんでしょうね。

じゃあ、もう先生はバイクも大学の授業も1からというか、ほぼ0からスタートみたいな感じなんですね。

そうですね。
僕ぼ仕事は全てゼロからのスタートですね。

とんでもない努力をなさったんじゃないですか。

とんでもないってほどじゃなかったけれど、でも仕事だからね。できないじゃ済まされないし、何よりできないと楽しくないじゃん!
だから、入ってすぐはとにかく基礎から勉強ですよ。

できなくて「いや、無理だ!」ってなったことはなかったんですか?

ああ、もちろん最初はたくさんありましたよ。
でも入って一週間くらいで散々愚痴は言い尽くしたし(笑)。
もうこれ以上別に愚痴言ってふてくされててもしょうがないし、だったらもう一から勉強して一人前のデザイナーになっちゃう方が早いかなっていう。
そういう風に切り替えられましたけどね。

すごい。どうやったら切り替えられるんですか? 息抜きとかしないんですか?

なんだろう。でもね、周りのバイク好きの人達は面白い人ばっかりだったんですよ、なんか。
入社して何週間かで免許取ったら、先輩たちがいろいろ「じゃあツーリング行くぞ」とか、バイクの乗り方、バイクは何買ったらいいかとかってそういうのをね、すごく一生懸命丁寧に教えてくれたんですよね。 
そんな面倒見のいい先輩がいっぱいいたからやれたのかなとは思いますけどね。

ありがとうございます。
ではここで、ご自身から見た川和先生ってどんな人か、聞いてもいいですか?

うわ、難しい質問するね(笑)。
褒めるのも貶すのも難しい。どっちもあるなって思いますけどね。
割と、困難なところを気楽に捉える方法を知っているっていうところは、いいところかなと思いますよ。
前職のデザイナーの時に、『もうこれでデザイナー人生終わりかな』みたいなことがいっぱいあったんですよね。

例えば、とかは。

例えば、デザインしたやつが全く売れないとか。バイクや車って開発にすごくお金がかかるんですよね。一回ミスって売れなかったら、何十億とか会社に損害が出ちゃうんですよ。
あとは、僕は後半ホンダのバイクの全てのアウトプットの責任者だったんです。だから会社のブランド価値やデザインの評判が悪くなるっていうのがとても怖かったんですよね。
「最近のホンダのバイク、デザイン最悪」とか言われたら嫌でしょう? SNSとかでさ。

うわ、きついですね。

でも、自分にとって大きな試練を乗り切れたことが糧になると、大抵のことにはもう動じなくなります。「別にこんなのどうにかなるよ、死にはしない」って。

いいですね、そのマインド。

最後はなんとかなるんだからっていう気構えができた。
ただその反面、舐めてかかるっていうのは悪いところかもしれませんね。
「別に教員なんとかなるじゃん」って舐めてかかったら、やっぱりそうはいかないところがいっぱいありました(笑)。
目的を持って学んでいる学生さんのためには、ちゃんと授業は作らないといけない。
それから、「甘い」ってよく言われますね。
やっぱり大学って自分で学ぶ場所でしょ。
自分の力で学んで、自分がどうしたいのかっていうのを決めて、それで社会に出ていく場所。
だから、あんまり丁寧に「何に困ってるの」とか「どうしたらいい」みたいなの教えてあげちゃうっていうのは良くないのかなって。そう思いつつも、そうなりがちなんですけれどね。

優しさとも言えますが。

優しさは時に罪だからね。優しく色々教えてあげたがために、その学生はその自主性みたいなのを失ってしまったみたいなことだってありえるでしょ。
だからそういう風にならないように気をつけてはいます。

モチベーションがない時の対処法

では次に、個人的な質問なんですが、モチベーションがない時の対処法をお聞きしたいんです。
モチベーションがない時、先生はどうしていましたか?

モチベーションを上げる方法ねぇ……、とりあえず嫌なことから逃げることかな。現実逃避(笑)。
最後はなんとかなるって頭の中にありますからね、一旦現実逃避して戻って頭切り替えたらなんとかなるじゃんこんなのって思えるようになりますよ。
それに、モチベーションを保ち続ける人なんていないですからね。僕は「やる気」には波があって然るべきだと思っています。
「夢はなんですか?」「将来何になりたいですか?」って聞かれてちゃんと答えられないとダメみたいに思わなくてもいいよって。夢なんて、そうそうみんな言えるものじゃないって(笑)。

将来どうなりたいかわかんないって、僕はずっとそうだったんですよね。
カーデザイナーになるって決めたのだって、大学卒業してからだからね。

とりあえず逃げるの川和先生

そうなんですか!

うん。
大学全然美大でもなんでもなくて、それで大学卒業する時に就職活動もせず、デザイナーになりたいなって専門学校へ行って、そのうちに車のデザインって面白いぞっていうのが分かって目指したんですから……。
でも就職してみたら「バイクデザイナー」だったみたいな(笑)。二転三転でしょ。
ただ、最後にそこに辿り着いたらすっごい面白い世界が待ってたっていう。 

早いうちに夢を持てるっていうのはもちろんとてもいいことだと思いますよ。
ただ、モチベーションが落ちてなんか気持ちが落ちてる時ってどうしたらいいですかっていう質問は、僕はそんな当たり前だって言う。 誰だってそうだよって。
とりあえずちょっとだけ現実から逃避して楽しいことをしたり、美味しいもの食べたりして、戻ってきたらいいんじゃないって思いますね。
完璧にできなくても死にはしないんですよ。絶対。

僕もね、海外駐在員として、イタリアにも5年くらいいたんだけれどね、特に英語が得意だったわけでもなくて。
ホンダって、一言も英語話せない人を平気で海外に送るんですよ。

ええ!

学校でやった記憶を掘り起こししながら、なんとか片言の英語でコミュニケーションして。
仕事だから話さないわけにはいかないし。でも思ったことはなかなか伝わらないし、そこからすると
日本語さえ通じるんだったら、多少の困難なんてなんとでもなるよって。
自分のことを話せて、相手のことを聞けて、それができるならなんでもできるじゃんってね。

たくさん経験してきたからこそ、多少のことは大丈夫って感じですよね。

うん、そうですね。
不安も多かったし絶望に近いことも味わったけれど、いつも最後にはなんとかなってきたから。
みんなもきっと、いろんなことがあって悩んでもさ、何にもしないで終わることはないじゃないですか。最後には何かしら足掻き、動くんですよ。みんな。それによって、自分の意思や考え方がいろんな方向に変わっていくことを楽しんだらいいんじゃないかなと思いますよ。
そんな世の中すごい人ばっかりじゃないし。
モチベーションがずっと高くて、いつも前向きって見える人でも、家でしょんぼりする時とかもあると思いますよ。

先生も、まだ家でしょんぼりすることがありますか。

ありますよ。
やっぱり思うように授業できなくて「ああこの授業つまんねーだろ」って、自分でわかっちゃうこともあるんですよね。自分の授業をもう一人の自分が客観的に見てるから。そうするとすっごい落ち込むことが、何度もありましたね。
講義とか半分くらい寝てるかパソコンで別のことしてるなーって時とかわかるんですよ。
そういう時は、やっぱり落ち込むね……(笑)。

…たくさんいいお話をしてくださったおかげでそろそろ質問が無くなってきちゃいました…..。

(笑)。難しいですよね。こういうインタビューってね。
 誰かを誰かを取材するっていうのは、もちろん大変なんだけれど。
かつ他の第三者から見て面白いものにしなきゃいけないっていうのがあるわけでしょ。しかも、高校生の人が見て「あ面白そうじゃんこの大学!」って思わなきゃいけないんですよね。

第三者の目の意識

お話を聞いていて思ったんですが、先生ってすごく第三者の目を気にされますよね。学生が、とか、この記事を読んでくれる高校生がとか。
やっぱり商品開発をやってきたからこそなんでしょうか。

うん、⻑い間商品開発すると、それは自然に身についてしまいます。
自分たちの作り出した商品を、必ず誰かがお金出して買ってくれるわけですからね。
あと会社っていう組織の中で、自分のこう考えたものを提案していくときには、必ずそれを決済する人がいるじゃないですか。 自分の上司だったり、もっと上の立場の人だったり、クライアントだったり。
そういう人たちを説得するために「どう見せるか?」「その人にはどう見えているか?」と考えるのは、いいか悪いかは別として、すごく身についちゃいましたね。
もうちょっと、自分本位で好き勝手やれる気質だったら、違った人生だったかもとは思いますよ。

では最後に、先生には、まだ未達成なこととか、これからやってみたいことってありますか?

未達成っていうよりも、やっぱプロダクト領域が今そんなに多くの学生さんが来てないじゃないですか。そうなんですよ。
だって視覚系のデザイン学科生がすごく多くて、プロダクト 30 〜40人ぐらいだから。

やっぱりこの領域の面白さみたいなのがまだ伝えきっていないのかなって思います。自分がすごく楽しくやってきた領域の話っていうのをもうちょっと上手く伝えたいなっていうのはあるんですけれどね。 
どういう手段をでどうすればいいかっていうのはまだまだ明確にわかんないところはあるんですけれど。

そのぐらいかなやってみたいことって。
あとは大体、やりたいことやり切ったかなっていう満足感はありますよ。 
行きたいとこへ行ったし、たくさんの人たちと共にやりたいことは大体チャレンジしたっていうのもあります。

さすがです。ありがとうございました!
では受験生の皆さんに一言、メッセージをお願いします。

以上『温柔敦厚なモビリティの人!川和聡先生ってどんな人?』でした! ありがとうございました!